ちょっといい「これで十分」/nuffに込めた想い

数年前から個人的にものづくりを行ってきたのですが、この度、新たにプロダクトブランドnuffとして名前を付け活動していくことにしました。

今、複数の商品開発をバタバタと行っている真っ只中ではあるのですが、どのような考えでモノづくりに向き合っていくか、今の考えを記し、何かに迷ったときに立ち返ることができるようにしておこうと思います。

挨拶

SNSではTommyという名前で活動している田口智祥と申します。私は大学と大学院で、工学設計とインダストリアルデザインを学んだ後に、精密機器メーカーに就職し、デザイナーとして、商品企画、プロダクトデザイン、コミュニケーションデザインなどを中心に広く携わっています。 

部品点数が多く複雑な製品を扱うメーカーでは、デザイナーが関われるのはコンセプトメイキングやスタイリングなど、ものづくりのプロセスのごく一部になってしまいます。デザイナーはデザインしたものを伝えて売るところまでやるべきと感じることが多く、その実践の場を探っておりました。

葛藤

日々新商品が生まれは消えていきます。
こんなに物で溢れているのに、新たに資源を投入して新商品をつくる必要があるのか、わずかに外観を変えただけの商品に作る価値があるのかと、ものづくりを志して大学生をしていた頃から、違和感を感じていました。

世の中に良いものがあれば、それを紹介して販売すればよいし、なければ新しくデザインすればよい。そういうスタンスでこのプロジェクトを始めることにしました。

ですので、新しく商品化する場合には、着想にオリジナリティがあったり、健康的な物作りとなっていたり、作る価値があると言えることを条件にしています。

自分のデザインを俯瞰しながら「これは作る価値がある」と「これは作る価値がない」の間で揺れながら、ものづくりをしていくのだろうと思っています。

使命

現代の生活は、利便性を求め、物で溢れた結果、本来私たちの能力を引き出すはずの物によって、くらしが圧迫されていると感じることがあります。

私の普段のSNSの発信活動の根底には、部屋と暮らしと仕事は地続きでつながっており、部屋を整えることは心豊かな日々に導くという考えがあります。

物で溢れ、複雑になった現代の日々に寄り添い、より少なく、より心豊かに暮らすためのモノのカタチを探求し、さらには、暮らしに対する感性が豊かになるモノを提供していきたいです。

哲学

暮らしをシンプルにする物って、どんなカタチをしているのでしょうか。
私は「enough」という言葉に可能性を感じました。「enough」とは、「これで十分」という意味で、ブランド名の由来にもなっています。

Azby Brownの著書「Just Enough: Lessons from Japan for Sustainable Living, Architecture, and Design」では、江戸時代の日本の暮らしに言及し、その「足るを知る」暮らし方、無駄のない、けれど満ち足りた生活を指して「Just Enough」と表現しています。

同じ考え方でプロダクトをデザインするとどうなるでしょうか。

 

例えば、ナイフ、フォーク、スプーンは、それぞれが切る・刺す・すくうの単一の機能しか果たしません。一方で、お箸はひとつでつまむ、はさむ、すくう、切る、はがすなど、複数の機能を果たすことができます。そして、お箸の構造と造形は単純な2本の棒を組み合わせただけの、より潔いものです。

このお箸のように、あえて手を加えすぎないからこそ生まれる、用途を限定しない余白のあるカタチこそが、現代の細分化されたデザインを統合し、物と人との関係性をよりシンプルにするのではないかと思います。

「これで十分」と言うと、ほどほどで妥協するという、否定的な印象を受けるかもしれませんが、そうではありません。

現代では「技術も材料も時間も惜しみなく投入する」と”良いもの”はできてしまいますが、それって本当に必要?と思うわけです。

材料も技術も装飾も必要最小限に留めながら最大限の効果を引き出すことの方がずっと重要であり、「人のより豊かなくらし」と「地球環境のよりよい未来」を両立する、全体で見たときにちょうどいい解を導く大切な考え方だと思います。

もちろん品質を妥協するつもりは全くありません。むしろ、「特別な加工技術を使わず」「加工手間を最小限に」「結果手に取りやすい価格で」をテーマとし、ちょっといい「これで十分」を探求していきたいと考えています。

そして、nuffのプロダクトを使ってくれる人にとって、 何が十分かを考えたり、何が心地よいかを感じるきっかけとなり、 暮らしを自分らしく楽しむことにつながっていけばいいなと思います。

長々と書いたのですが、コンパクトに纏めたものがAboutのページになります。

それではnuff(ナフ)をどうぞよろしくお願いします。

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